ロビン・スティーヴソン
中絶がわかる本
イギリス生まれ。カナダ育ち。大学では哲学とソーシャルワークを10年間学んでいた。25冊を越える子どもやティーン向けのフィクション/ノンフィクションを書き続けている作家。
2016年にLGBTとサポーターたちを書いた「プライド:多様性とコミュニティを祝う(仮題)」を刊行し、ストーンウォールオナー賞を受賞。米国児童図書評議会 OUTSTANDING INTERNSTIONAL BOOKS LISTにも選ばれた。「中絶がわかる本」は、2020年カナダを代表するシーラ・A・エゴフ児童文学賞を受賞した。
作者はじめにより
私の著書「MY BODY MY CHOICE : The Fight for Abortion Right 」が日本で翻訳出版されることを知って、大変うれしく、光栄に思っています。作家というものは、自分の本が他の国で新たな読者に読んでいただけることに常に胸が高鳴るものですが、日本のみなさんにお届けできうことは格別の喜びがあります。私は、幼い頃に名古屋に住んでいたことがあり、それが私にとって最初の記憶だからです。いつか訪れたいと思っていたのですが、どうやら私の本のほうが先に日本を訪れることになりそうです。
本書は2019年にカナダとアメリカで出版されました。この本への反応は興味深いものでした。高評価のレビューをいくつもいただき、ブリティッシュコロンビア州の最高の児童賞であるシーラ・A・エゴフ児童文学賞を受賞し、読者からは重要な本だという声が寄せられました。ところが、これまでの私の作家としての経験とは対照的に、この本については、公開読書会がひらかれたり、本のテーマについて学生たちと話しをする機会はほとんどありませんでした。
はっきりわかったのは、やはり中絶にまつわるスティグマは根深く、至極一般的に行われている医療行為が、今もまだ物議をかもすテーマであり、タブー視されているということです。人々の態度を変え、意識を高めるには、まだまだやるべきことが山積みです。
私がこの本を書き始めたのは、2017年にドナルド・トランプが米国大統領に就任した直後のことです。当時のアメリカでは、中絶の権利が危険にさらされ、安全で合法的な中絶を受けることがどんどん難しくなるように感じられました。残念ながら性と生殖の権利に対する脅威は、今もエスカレートしています。たいへn衝撃的だったのは、一貫して男女平等を訴え、中絶の権利を擁護してきたルース・ベーイダー・キンズバーグ最高裁判事が2020年に死去したことです。最高裁判事の席がひとつ空いたところに、トランプ政権3人目の最高裁判事として、中絶に反対するエイミー・コニー・バレットが指名されました。その結果、アメリカ最高裁は、保守派が圧倒的多数を占めるようになったのです。・・・(続きは本書で!)